【Book】宇宙はなぜ美しいのか 究極の「宇宙の法則」を目指して(幻冬舎 村山斉/著)

 宇宙はなぜ美しいのか? 本書では、星空、惑星、銀河、星雲、ブラックホール、これまで撮影されてきた宇宙のさまざまな写真を用いて、そこで何が起きているのか、なぜそう見えるのかを分かりやすく解説してくれています。正直、それだけでも十分楽しめる一冊なのですが、本書の本題はそこではありません。目に見える美しさだけではなく、この宇宙の成り立ちを研究する物理学者にとっての「美しさ」について解説する意欲的な一冊です。

 本書では物理学者のリチャード・ファイマンの次の言葉が紹介されています。

 「科学は星を気体と原子の塊だというので、詩人たちにはせっかくの星の美しさを台無しにしてしまうと文句を言われる」

 科学者が自然の美しさに対して科学的な説明を施し、情緒を台無しするということだと思いますが、なんか分かるような気がする言葉ですよね笑。だけど、物理学者は物理法則という“ 世界の真実 ”が美しく成り立っていることを知っていて、科学の歴史の中で培ってきた「物理法則は美しい」という美的感覚をもっている。彼らは事象を通して、美しく成り立った“ 真実 ”を見て美しいと感じている。詩人とは全く異なる見方ですよね。

 宇宙を支配する物理法則のどこに美しさを感じているのか、本書によると具体的には「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定性」の3つだそうです。物理学者は真実は美しいものだと信じ、簡潔で対称性と安定性を持つ美しい理論を描こうとする。芸術家が絵を描くように、理論を描く。理論には理論の美しさの軸があるのです。

 そんな物理学者の“ 美的感覚 ”を物理学者の村山先生が解説してくれている本書は、なかなか日常では持ちえない感覚を教えてくれる面白い一冊です。

 最後に、さきほどのファイマンの言葉は以下のように続きます。 

 「果てしない宇宙は私の想像力をかきたてる。私の目は100万年も旅をしてきた光見ることができるのだから。私自身が一部であるこの果てしない宇宙-どんな仕組みで、どういう意味で、なぜそうなのか? この謎を少しでも解き明かすことは、悪いことではないよね。昔のどんな芸術家が想像したことよりも、真実はもっと素晴らしいじゃないか。なぜ詩人たちはこのことを話さないのだろう?」

(幻冬舎 村山斉/著)

Uroko

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